世界のモダンデザインと民芸 日本人の買い物の軌跡
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Gaston Noury “Pour les Pauvres”
1865年フランス生まれの画家、イラストレーター、演劇の衣装デザイナーとしても活躍したGaston Noury (ガストン・ヌーリー) による1986年のリトグラフ・ポスターです。当時のオリジナル。“POUR LES PAUVRES DE FRANCE et de RUSSIE”とのタイトルと、馬橇に乗った2人の女性が描かれています。直訳すると、“フランスとロシアの貧しい人々のために”。おそらく同名の演劇のためのポスターと思われます。経年で変色した台紙に時代感が表れています。“GRANDES FÊTES DES TUILERIES (チュイルリーの大祭典) ”との表記も書かれており、パリ1区にあったチュイルリー宮殿でのお祭りで公演されていたものと思われます。色味や濃淡のグラデーションはドットや線描で表現され、当時の最先端の刷り技術が駆使されているようです。女性たちの品のある表情も印象的。細部の表現もきれいです。刷り工房の表記として、“HÉROLD & CIE.”の表記が見られます。その横には、デザイン処理されたGaston Nouryの刷り込みサイン入り。ゴールド色のアルミフレームで額装されています。裏面に壁掛け用の紐付き。フレームに色むら、マットに薄いシミが見られます。アクリルの表面にもスレが見られますが、作品自体に目立つ大きな汚れはありません。ロートレックなどの登場により、ポスター芸術が大きく花開いた19世紀末のフランス。前衛芸術や新しい工業技術も登場する一方、退廃的なムーブメントも誕生した時代です。そんな当時のパリの空気感を今に伝える、たいへん希少なポスター。それほど大きなサイズではありませんが、空間の印象を変える、古いものならではの力を持っていると思います。